長所
「貴方の長所はなんですか?」
ありふれた質問。
だが、未だに答が見つからない。
人より秀でた物がある訳でもなく、
特別な事をしている訳でもない。
自分の長所を探しても、
自分より上にその長所を持つ人がいる。
自分の長所は何だろうか。
よく、人から「優しい」と言われる。
でもそれは事実では無い。
何の長所も持たない僕は、
努力も出来ない僕は、
「優しいふり」をする事で、
人から認められようとする。
それが一番簡単だからだ。
特技は無い。
努力もしない。
何も持っていない。
そんな人間が人から認められるなら、
親切にするしかない。
優しくするのは得意だから。
嫌われたくないから。
今まで散々嫌な想いをしてきたから、
何をされたら嫌か分かる。
何をされると助かるか分かる。
それを実践する。
それしか出来ない。
そうして出来た人間が僕だ。
ダメ人間を優しさで取り繕っている。
人の顔色ばかり伺ってきた人間は、
人の顔色ばかり伺って生きていく。
汚い感情から生まれた優しさを振りまいて。
僕の長所はなんですか?
少なくとも、優しさでは無い。